ここは出国審査や保安検査に時間がかかることで有名なアジア最大の国際空港。
チェックインカウンターに着いた時には既に出発時刻の1時間前。
普通なら絶対に間に合わない。飛行機に乗り遅れてしまう。
そんな時、どういった行動をとるべきだと思いますか?
最低な自分
今回の話は正直、ブログに書くべきか迷いました。
ある意味「最低」なことを私はしてしまったわけですから。
飛行機好き、旅行好きな皆さんから非難されても私には返す言葉がありません。
ただでも、本当に飛行機に乗り遅れそうになった際には、もうこれをするしかないのです。ひたすら醜態を晒すことになるわけですが、兎にも角にも、選択肢なんて他には存在しないわけで。強引に進むか、それとも諦めるか。
ということで、今回は先日飛行機に乗り遅れそうになった私がとった行動についてご紹介したいと思います。
状況
その日、私は北京首都国際空港から中国国際航空の便で東京に向かうことになっていました。
午後のフライトだったため、午前中は仕事。いつも通り朝から忙しない時間を過ごしていました。そんな中、仕事上のトラブルが発生し私は対応に追われることに。非常に厄介なトラブルであったため、正直フライトのことなど半分くらい頭から抜けてしまっていました。ふと我に返った時には当初予定していた退社時刻を大幅に過ぎており、私は慌ててタクシーに飛び乗りました。
悪いことというのは連続して起こるものです。経験したことのないレベルの渋滞。全然車が進まない。これはもうダメかもしれないと、変な汗が止まりませんでした。
到着後、チェックインカウンターまでスーツケースを押しながら疾走。もう頭の中はパニック状態でしたが、とりあえず「急ぐ」以外の選択肢が思いつきませんでした。
この空港、特に第3ターミナルは出国審査や保安検査の際に時間がかかることでよく知られており、旅行代理店で航空券を買う際などには、「飛行機の出発時刻の3時間前には空港についているように」とアドバイスされるのが一般的です。羽田空港の国際線ターミナルなどとは全く次元の異なるレベルなのです。
そんな空港のチェックインカウンターに到着したのはなんと飛行機の出発時刻の1時間前。普通であれば、もう絶対に間に合いません。しかも、まだチェックインすら済んでおらず、手元には搭乗券すらないのです。普通であれば100%無理です。諦めて他の便が利用可能か調べるべきでしょう。
唯一の選択肢
上級会員用のチェックインカウンターには短い列ができていて、自分の前には3人。
もう迷っている暇はありませんでした。その3人に青ざめた顔で頭を下げ、謝り、お礼を言って先に行かせてもらうことに。
カウンターのスタッフの女性は行き先を聞くと「あんた、アホじゃないの!!!」と罵声を浴びせるが如く驚いた顔をし電話に手を。若干のやり取りの後、お姉さんは大慌てて搭乗券を印刷し、鬼気迫る顔で「死ぬほど急げ」的なセリフと共に進路を指差しました。
再び疾走。
ただ、この空港を利用された方ならわかるかと思うのですが、ここからの道のりが本当に長い!
まずはゲートで搭乗券をスキャンして制限エリアに。そして次はシャトルトレインで搭乗ゲートのあるエリアまで移動。これだけでも結構時間がかかるのです。
入国審査を受けるエリアに到着し、目の前に広がる光景を目にして私は絶望しました。
長蛇の列。
この時点で既に搭乗開始時刻の5分前。この列の長さだと、出国した時点で間違いなく飛行機のドアは閉まっていることでしょう。しかも、出国審査の後には保安検査が控えています。間に合うはずがない。どんなに楽観的に見積もっても1時間遅かった。
でも、私には別の恐怖がありました。
「そんな場所で立ち往生したらどうなるのか?」という恐怖です。
私にはもう、「とりあえず前に進む」という選択肢しかありませんでした。
ここからの光景はもう思い出したくもありません。搭乗券を持った手を掲げ、あえて周囲の人たちに聞こえるように大きめの声で自分がいかに悲劇的な状況に置かれているかをアピールしつつただひたすら並んでいる人たちを抜かしていきました。ここはアジアでは最大、世界第3位の大規模国際空港。白人、黒人、ラテン系、中東系、、、もちろん、私と同じパスポートを持っている同胞もたくさんいました。そんな皆さんに謝罪と感謝の言葉を述べつつ、くねくねと蛇腹のような列を進み、審査官の目の前へ。
皆さん、快く順番を譲ってくれましたが、ベビーカーを押したママさんに譲ってもらう際には胸が張り裂けそうでした。本当にごめん!
私の異常な行動を目にしたタトゥーだらけの白人男性なんかはもうテンションが上がってしまったようで、「GO, GO, GO, GO, GO!!!」と特殊部隊の訓練でもしているかのように叫び、周囲は騒然としていました。お礼を述べた際の彼のサムズアップは一生忘れません。
出国審査を抜け、保安検査場に移動する際にスタッフを捕まえ搭乗券を見せたところ、特別なレーンに案内してもらえ、だいぶショートカットをすることができました。他のレーンはやはり長蛇の列でしたから。
しかしこの時点で既に搭乗開始時刻は過ぎていました。待ち人数の少ないレーンとは言っても10人以上は前にいましたから、やはり間に合わないことは決定的。
もう迷っている時間はありませんでした。搭乗券を見せつつ順番を譲ってもらい、前へ前へ前へ。快く順番を譲ってくださった日本人のご夫婦など、既に搭乗開始時刻を過ぎている私の搭乗券を見て開いた口が塞がっていませんでした。
保安検査場を抜け、あとは搭乗ゲートを目指すだけ、ではあったのですが、それがまた遠いこと遠いこと。この時点で搭乗開始時刻などとっくに過ぎていましたから、まだ乗れるものなのか半信半疑ではありましたが、兎にも角にも全力疾走。
搭乗ゲートにはスタッフが4人だけ。他には誰もいませんでした。全力疾走で自分たちの方に突っ込んでくる私の姿を見つけ、手を振る4人。身を焼かれるような羞恥心に気が狂いつつ、間に合ったと確信しました。この時点で出発予定時刻の12分前くらいであったと記憶しています。
教訓
ということで、毎年数十フライトは国際線を利用する私ですが、こんな歳になって初めて今回のような経験をしました。
過去、「搭乗時刻が迫っているので先に行かせてもらえますか?」なんて言われて順番を譲るケースは何度かありました。ただ、「何度か」という表現が適当なくらい少なかったです。しかも、搭乗開始時刻までにはまだそれなりに時間があるものの、単に心配性なだけの方がそういった行動をとるケースばかりでした。今回の私のような本格的にヤバい奴に遭遇したことはありません。
皆さん、国際線を利用する際には、どんなに遅くとも2時間前までには空港に着いておくべきです。羽田空港なんかの場合、空港に着いて30分後にはもう搭乗ゲート付近にいる、なんていうケースもよくありますが、それは羽田空港が異常なだけです。
結局のところ、「慣れ」ほど恐ろしいものはこの世にありません。国際線利用時というか、国を跨ぐような移動の際にはやはりある程度緊張感を持つべきだなと、今回痛感しました。
しかしながら、これはもちろんただの言い訳ですが、トラブル由来の「遅刻」というのはやはり誰にでもあり得ます。ですから、そういった特殊な状況においては、多少無理を言って今回のように他人の優しさに甘えさせてもらうという選択肢もありなのかなと。
順番を譲ってくださった名前すら知らない大勢の人たちに本当に心から感謝していますし、困っている人に遭遇した際には、自分も極力手を差し伸べてあげられる人間でありたいなと、そんなことを思いました。
日本人として、あのような場所で醜態を晒してしまったことに関して申し訳なく思っています。ただ、それでも今回の話をシェアすることには何らかの価値があるのではないかと思い、筆をとった次第です。